はじめに
グループ企業や関連会社との取引は日常的に行われますが、その内容によっては税務上「寄附金」と認定され、損金算入が否認されたり、追徴課税・重加算税の対象になる可能性があります。本コラムでは、国税不服審判所の裁決事例をもとに、どのような取引がリスクとなるかを解説し、実務上の防止策を紹介します。
事例:実態のない支出が「寄附金」と認定
ある農業法人が、関連会社経由で行った建設工事に係る支出について、実質的に役務提供がないと判断され、次のような支出が「寄附金」に該当するとされました:
- 建設会社から関連法人に対して支払われた、実態のない工事代金
- 建築士を通じた設計コンサル料のうち、実質的なサービス提供がなかった部分
一方、ビニールハウスの設置に係る工事については、関連法人が実際に作業を行っていたため寄附金に該当しないと判断されました。
寄附金とは?|法人税法上の位置づけ
法人税法上の「寄附金」とは、形式にかかわらず実質的に対価性がないとされる支出を含みます。
金銭・資産の贈与や、経済的利益の供与で、合理的な対価性が確認できないものが該当します。
寄附金と認定されないための実務対応
- 取引の実態を明確に:契約書・請求書に加え、作業報告・写真・納品書などを準備
- 価格の妥当性を証明:相見積書、原価資料等を残し、独立企業間価格と整合性を持たせる
- 契約書の整備:取引の目的・期間・金額・業務内容を具体的に記載し、合意を明文化
- 帳簿書類の保存:取引内容に即した記録と証拠資料の保存体制を整備
おわりに
関連会社との取引が「寄附金」と判断されると、多額の税負担が発生するだけでなく、青色申告の取消といった重大な影響もあります。
グループ会社間の取引であっても、形式より実質が問われる点を常に意識し、必要な準備と証拠の整備を徹底することが求められます。